2009/06/13

北京のトイレ事情

北京の観光地はほとんどすべてトイレが綺麗な水洗便所になっている。観光客がほとんどこないだろうと思われるような場所でも、もう噂の「ニーハオトイレ」にお目にかかることは無い。絶対どこかにニーハオトイレがあるものだと期待していたのだが、洋式の便座タイプは無くても、和式の水洗トイレが完備されているのには吃驚した。それだけ北京オリンピックに対する中国政府の意気込みと「野蛮人文化」のレッテルを貼られて世界に情報発信されるのを恐れていたのだろうと思う。当の北京在住の住民たちはどう思っているのか分からないが、それでもトイレットペーパーはまず無い。きっと個室を利用する人が勝手に持って帰るのだろう。かつてのニーハオトイレは、一体どこにあるのだろうか?

それともう1つ不思議なことを見つけた。

北京には意外にたくさんの公衆トイレがある。それも胡同になればなるほど、その数は激的に増える。ということは、一般家庭の家にはトイレが完備されていないのだろうか?また北京の下水道の敷設状況は良く分からないが、表向き水洗でも、結局汲み取り式になっているのかどうかはわからなかったが、汲み取り式であれば、汲み取り車が結構頻繁に街中を走っているのだろうが、滞在中一度も見ることは無かった。ということは、ほぼ100%の割合で下水道完備になっているのだろうと推測した。

北京のタクシー事情

北京市内は結構頻繁に流しのタクシーを見つけることができる。日本と同じように、タクシー会社も複数あり、会社ごとに車体の色が異なるため、アメリカや台湾のように「タクシーは黄色」ということではない。もちろん、乗り方は日本と同じように手を挙げて、運転手に行き先を告げて乗る。

一番捕まえやすいのは、ホテルであるのはどこの国でも同じこと。北京においても同じである。あと感想としてはホテルに乗り入れているタクシーのほうが、上客を乗せていることもあるので、信頼性が高い場合が多い。これは経験則なのだが、タクシーの品格(?)によって出入り許可・不許可をホテル側が勝手に決めている場合を見かけたことがある。北京のホテルはまだまだサービス発展途中なので、そこまでの見極めはしていないのだが、それでも流しのタクシーよりはマシだとおもう。

さて、行き先をつける場合、中国語で述べるのが一番良い。そりゃぁ、北京は中国語の中心地であるためであることも理由だが、噂で聞いていたよりタクシーの運転手は英語が理解できない。オリンピックを期にタクシーの運転手も外国人観光客を乗せることが多くなるから、英語の練習をしているという報道を見たことがあった。それを信じきっていたところ、全く通じない。そこで中国語になるのだが、北京の場合、田舎モノの中国人が北京に集まっていることもあり、多少発音が悪くても実は結構通じることが分かった。

日本人は漢字文化圏だから漢字を書けば良いじゃないかと言われるだろうが、これも実は経験上あまり通じないこともわかった。中国の漢字は簡体字を採用していて、日本の漢字と少し異なる形式を採用している。台湾や香港では繁体字を採用しているため、日本人でも漢字を見れば何の漢字か、特に書道をやっている人は旧字体の漢字を書けるし読めるだろう。しかし大陸の簡体字は、行書や省略体を頻繁に書いている人は読める場合が多いが、ほとんど読めない漢字が多い。逆にいうと、大陸の人たちは毛沢東政権以後、簡体字で育っているために繁体字やまだ繁体字を少し残している日本の漢字を読めないのである。だから、同じ漢字文化圏だからといって、「書けば何とかなる」と思ったら実はダメだ。しかし、教養のあるタクシーの運転手に乗ったら儲けもの。繁体字も読めれば字での会話はOKだ。

観光地で客待ちをしているタクシーの運転手は、だいたいろくなやつらが居ない。ホテルに出入りしているタクシーとは違って、観光地から客は「必ず」移動する必要があるわけで、その客を乗せる・乗せないをタクシー側が勝手に判断しているからである。頤和園から円明園に移動する際に、バス乗り場がわからなかったので、目の前に屯しているたくしーの運転手たちに「円明園まで行きたい」といったら、「あぁ、だめだめ」と軽くあしらわれた。頭にきたので「なんでー?」と聞くと「近すぎるから」だそうだ。タクシーの運転手から見れば、長い時間客待ちをしていて近場の客を乗せていたら、商売上がったりということなのだろうが、客としては運転手が何時間客待ちをしているのかは知ったことではない。客商売をしたことがある国で育った人間から見ると、客商売をしたことがない国の人間のサービスには唖然とすることが特に多く見受けられる。

その様子を傍から見ているのが白タクの運転手だ。白タクは、正規のタクシー運転手が客を乗せないオコボレを得ているのだから、この行動は納得だ。しかし、白タクがきた場合には値段交渉が必要となる。値段交渉はもちろん中国語がよし。中国語が話せないということがわかると、相手は外国人価格で交渉してくる。少しでも中国語が話せればその価格は下がってくるので不思議ではあるが。そして、前項で記載した「現地人価格」を頭の中で計算して交渉することが望まれる。距離と時間を計算した上で、妥当だと思ったら、相手の値段の半分から交渉開始だ。大体の場合が3倍を吹っかけて計算してくるので、その場合は1/3の価格を鵜呑みしたほうがいい。だいたい1回目は交渉決裂になるのが当然である。「もういい!他に行く」とそっぽを向いて別のところにいこうとすると、今度は向こうのほうから近づいてきて、さっきは「値段を下げない」と言っていたくせに、勝手に値段をさげて第2回目の価格交渉が開始される。そうなったらこっちのペースに持って来ればいい。頤和園でも、正規運転手に交渉して交渉決裂の上に「Fuck!」と捨て台詞をしていた外国人観光客を何組も見た。出来るだけ白タクを選ばないのが賢明だが、正規の運転手だからといってまともに乗せてくれるとは限らないので、そこの見極めが難しい。

北京のタクシーはメーター制を採用しているので、上記のように白タクを選ばなければ、普通は金のことを心配しないでタクシーに乗ることが可能だ。タクシーの運転手が回り道をしなければ、それほど値段に心配する必要は無い。どんなに遠くに行ってもだいたい100元以内で収まるからである。日本円に直すと1500円程度なので、そんなものでガタガタ言うのも人間が小さい。ただ、こちらが北京市内の地理に多少なりとも詳しいと、タクシーの運転手もインチキができないとわかるようで、不安な人は地図を見ながらとか、または周りの景色を指差して「あれが〇〇だよねー」みたいなことを言うと、だいたい運転手は車がどこの場所を移動しているのかが客も分かっちゃっていることを見抜いて、遠回りすることは無いようだ。ただし、北京の道は幹線道路は幅が広く、目的地が進行方向と逆側に建物が存在する場合は、むやみやたらに逆側路線にいけない為、多少遠回りになってしまうこともよくある。

北京のタクシーの運転手は概してプロ意識の高いひとが多いという印象はあった。流しのタクシーでも運転は荒くなく、何を言っているのかわからないが「この道はいつも混んでいて嫌なんだよねー」みたいなことを言っていたりするし、北京の暑さに参っていたら、冷房をガンガンに効かせてくれるし。だから臆せず北京のタクシーに乗ったら良いと思う。それでも変なタクシーの運転手に乗ってしまったら、そんなに乗らずにすぐに降りるべきである。そして、助手席に掲げているタクシー運転手の証明書の名前と車体番号をメモることをお勧めする。メモをしたら運転手の態度は180度変わるからお試しあれ。彼らも雇用関係でタクシー会社と契約しているので、解雇されたら、明日から御まんまの食い上げがなくなるからである。

北京の物価とコンビニ

中国の物価、特に北京の物価は、上海に行ったときに感じたこととほぼ同じだったので、記載したいと思う。

正しい為替レートでは、1中国元=約15日本円で良いのだが、それをそのまま現地の物価価値に適すると、中国の物価はかなりまだ安い。実際に、地下鉄の乗車値段は2元だから、日本円に直すと30円。これは安い。じゃ、その30円の価格というのは、現地の人から見たら、高いのか?それとも安いのか?これが分かれば、他のものを買う際にも、その価格が高いのか安いのかを判断できると思う。

一般市民の足としてすっかり定着した地下鉄の価格が2元ということは、地元北京の人にとっても、この2元というのが妥当の値段として考えているのだろう。これが高ければ、一般市民は地下鉄を使わないで、他の代替手段を考えるのだろう。日本での初乗り金額は、東京の場合は160円(都営なら170円)で、他の地方に行くと200円くらいが相場なのではないだろうか。

そう考えると、中国での価格と物価価値を計算すると、単純に、表示価格にゼロを2個つけた価格を人民元から円に単位を直した(為替レートで変換するのではない)価格が、現地感覚の価格なのだといえるのではないだろうか?つまり、先の例でいうと、地下鉄の価格2元というのは、現地の感覚で言うと、200円くらいの価値という意味で取ればよいのだ。この単純な値段の出し方が、結構北京滞在中には役に立った。

観光地ではキオスクのような屋台が必ずあるので、そこで飲料水を買うのは、暑い北京では必須だとおもう。だいたい、こういうところで売られているミネラルウォーターは1本3元だ。先の計算で言うと、現地価格300円ということになり、日本人感覚で300円の水を買うのはちょっと高いなとおもうが、観光地価格で、なんでも高くなるというのは日本でも同じなので、まぁ、300円くらいは問題ない値段といえよう。実際にコンビニに行けば、1.5リットルでも2元くらいなので、これは日本人感覚としても同じなのではないだろうか。

タクシーの値段も、北京市内ではメーター制なので、安心して乗れるが、だいたい遠くまで乗ったとしても100元程度だ。日本円に直すと1500円程度だから、それだけでも安いとおもうが、現地感覚でいうと1万円に相当する。さすがにタクシーの運転手も1回につき1万円くらいの客を乗せれば「儲けもの」とおもうに違いない。

別の機会に「タクシー」だけを記事したいのだが、頤和園から円明園に行く際に、白タクのおっさんが「20元でどうだ?」と言ってきた。距離感が全く分からないので、それが高いのか安いのか検討もつかないが、普通のタクシーのおっさんが行かないということを考えると、結構近いと踏んだ。それでも20元なので、日本円だとたった300円だが、現地価格で考えるとそれは2000円。近いのに2000円は無いだろうと判断し、「近いんだろう?だったら15元」と交渉。オヤジは最初「そんなのダメダメ」と無視していたのだが、客がなかなか捕まらなかったらしく「分かった。じゃ、15元でいい」と交渉成立。白タクを値引きさせたのも酷い日本人だと思うが、日本人が15元だの20元だのでガタガタ言っていることがきっと他の日本人から見たらどうでもいいことに見えるかもしれない。でも、現地の感覚で行動していると、たかが5元も大きく見えてくるから不思議で、その感覚でモノや人と接していると、「金持ち日本人」一般的に見られているのを、自然に現地の人たちに混ざれるような気がする。

だから、レストランでお茶を出されて、それが50元なんていうのを言われたら、「はぁ!???こんなのが50元?ぼったくりバーにでも来ているんじゃないんだから、その値段は無いだろう?」と驚愕するのは当然だ。

そういえば、コンビニを北京で探すのは大変だ。台湾の感覚でコンビにはそのへんにいたるところにあるだろうと思われると困る。特に大きな通り沿いには、「絶対」といっていいほどコンビニ類は存在しない。じゃぁ、どこに気軽に買える店があるのかというと、それは裏路地にあるのである。裏路地には人が住んでいるため、人が住んでいるのであれば、その人たちが生活必需品をゲットするための店が近くにあるはずなのである。それが路地裏なのだ。意外に路地裏には、店が結構あったりする。しかし、なかなか観光客では入りにくい。もちろん、そんなところでは英語が通じるわけが無い。だけど、指差して、それくれー!とジェスチャーでやれば、なんとか通じるものなのだ。

北京の気候

日本の6月というと、梅雨に入ろうという時期になるため、毎日がじめじめしていて気持ちが悪いと思う季節だ。しかし、最近は、温暖化現象のせいか、6月になっても梅雨らしい梅雨にならないで、晴天が続くことが多い。だから、ジューンブライトの時期は結婚式として人気があるが、天気が悪いのが難点というのが昔からよく言われていたが、そんなことも最近はなくなってきたのだろうと思う。

北京の5月終わりから6月にかけては、ほとんど夏になりかけの時期である。自分たちが北京に到着した5月30日は、東京での気温は高々22度くらいの程度であったのだが、北京では既に32度をさしていた。そして、北京の空港に到着したときに、ここは地中海の空港か?と思わんばかりの日差しのきつさには吃驚した。眩しいというのを超えて、眼が開かないくらいの光度が空港を照らしていたからである。ということは、それだけ日差しがきついので、表にでると、刺すような日差しにぐったり来るのだろうというのは想像できた。
表を歩くにはサングラスが必須である。そうじゃないと眼がやられてしまう。台北やシンガポールでも日差しが強いというのを感じる場合があるが、それは台北やシンガポールでは道路に緑がたくさんあるため、その緑が緩和されて眼に直接日差しが入らないようになっている工夫もある。しかし、北京の場合、道路には街路樹らしい街路樹があまりない。ほとんどコンクリートの建物と、その建物からの反射光と、路面はアスファルトおよび土ぼこりで覆われている。これでは眼がやられて仕方が無い。

しかし良い事もある。北京は内陸性気候であり、海が傍には無い。従って湿気が全く無いのである。冒頭に「地中海みたいな」と書いたのはまさしくそのとおりで、地中海も暑い割りには乾燥しているため、日差しが強いが、日陰になるところに行くと、とても涼しいのだ。北京も同じように日陰になっているところになると、かなり涼しい。そしてそよ風でも吹いてくれると、日陰でのんびりしているというのも、なかなかおつなものと感じることができる。

北京は建物が広い敷地をもっているためか、かなり広いため、歩いていると嫌になる。地図で見て近いなーと勝手に思い込み、意気込んで歩いてみると、途中でグロッキーになること間違いないだろう。紫禁城のような場所では乗りものに乗ることができないから仕方ないが、普通の市内を移動する際には、できれば歩かずに交通機関を使うことをお勧めしたい。どんなにちかいところでもタクシーを使うのが一番いい。きっとタクシーのオヤジたちは嫌がるが、こっちは客なのである。立場は上なのだ。強く言い張ればいい。嫌だったら、車のナンバーとオヤジのドライバーライセンスが助手席に見えるように書いているので、名前を覚えておけばいい。名前をメモに取ろうとする格好をするだけで、客の言いなりになるはずだ。

もう1つ北京の気候に関して思うことがある。それは「空が常に黄色い」ことである。どんなに晴天でも、北京は真っ青の空になることはない。これは砂漠化している華北地方特有なのかもしれないが、黄砂と土ぼこりが空を常に覆っているためだと思う。黄砂の酷さは日本にいながらにしても、その報道をよく見ることができたので、実際にこの眼で見るまでは「嘘だろう」とおもっていたが、半端じゃない。あれは喉が痛くなってもおかしくない。街中にいても気付くのだが、山間部のほうに行くともっとよく分かる。近くの山なのに、その稜線が全くはっきり見えないのだ。自分の目がくすんできてしまったかのような光景なのである。それでも北京市内の人たちは、マスクをして歩いている人は居ない。マスクをしていると、病人と間違えられるからなのだそうだ。さらにいうと、タクシーのおっさんが教えてくれたが、これでも以前に比べると空の黄色は、マシになってきたと言っていた。一体前はどんな様子だったのだろうか?

それでも、北京に住んでいるネット友達は「空は青いよ」と、こちらが北京へ渡航する前にはしきりにいっていて、「日本は報道が極端だ」と言っていた。半分信じていたのだが、実際にこの眼で見てみて、報道のほうが正しく、おまえらのほうが自分たちの不甲斐なさや実情について面子を保てないというような情報をすべて「嘘」と片付けるほうがおかしいと、帰国後第一声として返答しておいた。中国での報道は嘘ばかりであり、それを信じて疑わない北京市民たちは、可愛そうな奴隷民族と、自由報道のある日本人から見ればそう思えてならない。

土ぼこりについても追記したい。大きな通りは本当に綺麗に整備している。最近開発したばかりだから、街路樹があってもそれがまだ貧相な状態になっていて、歩道を歩いていてもあまり日陰が無い。まぁ、そのうちその街路樹も大きく成長するのだろうが、北京は慢性的に水不足であるため、亜熱帯の地域にある都市の街路樹に比べると成長は遅いと思われる。そんな大通りから一歩路地に入ると、もうそこは胡同の世界である。胡同に入ると、街路樹なんていう代物は全く存在しない。舗装もろくにしていないような道路がまだまだたくさんある。いちおう舗装途中とか、下水道の敷設をしている最中という名目で道路に穴を掘っているところが結構あったりするのはまぁいいとしても、ほとんどの道路がノン・アスファルトなので、土ぼこりの道になっているのである。そこを車が猛スピードで走ると、映画で砂漠地帯を車が走っている光景を想像してくれればいいのだが、車が走った後は、街中なのに土煙がもうもうと立つのだ。そこを普通に歩行者があるいているのだから、毎日鼻の中が真っ黒になるし、顔も真っ黒になる。胡同なんて歩くもんじゃないと分かるだろう。それよりも、もっと酷いのは、工事現場で、日本の場合、工事現場では建設・破壊のどちらでも、あまり土煙が立たないように水をかけながら、作業を進めることが多い。ところが水不足の北京では、無駄に水を使うことが許されていないのか、まず建設現場で水を使って、土煙が立たないようにしているという光景は、全く存在しない。だから、建設ラッシュの北京しないでは、いたるところで土煙が立ち込めており、それが拡散しているから、空が土煙で黄色から白くなって見えているのである。

教訓:街中は歩くな。日焼け止めクリームは厳重に塗る。日傘か防止は必須でサングラスももちろん必須。

中国のテレビ放送(北京)

北京のホテルでは、NHKもCNNもEuroSportsも視聴することは可能だ。泊まっていた京倫飯店でも見ることは可能であったが、日本の放送局はNHK以外は観ることが出来なかった。他の国と同様、NHKも海外用のNHK放送番組しか受信することは出来ない。だから、普段NHKの総合または衛星放送で観ている内容や番組構成とは異なるので、違和感があるかもしれないが、それでも日本語の放送を観て、聴けるというのは、海外ではありがたいものである。その他はCCTVががっちり、たくさんのチャンネルを専用しており、他の地方局のチャネルもいちおうケーブルテレビという形で視聴することができた。中国にあるすべての省には独自のテレビ局があるようで、それぞれで違う番組を放映しているため、ケーブルで選ぶときにどれを選んで良いのか迷ってしまうくらいであった。

しかし、テレビを見ていて気になることがあった。それはNHKを観ているときのことである。中国のローカル放送ではないので、海外用のNHKの番組では、日本で見るときには普通に存在する「時刻表示」というのは無い。それは問題ないが、時刻表示が無くても、天下のNHKなので、時間正確に番組は放送されるものである。実際に北京で見ていてNHKはその時間正確な番組放送ではなかったのである。というのも、NHKでは番組放送をする際に「〇時ぴったり」で始まる番組は多い。だから、その番組の開始を、時刻あわせとして使えるはずなのだが、なぜか時刻が妙に変であることに気付いた。

NTT DoCoMo も携帯電話に「自動時刻補正機能」というのを持たせており、定期的に携帯電話が正しい時間を秒単位で合わせる機能を持っているのだ。携帯の時間補正はそんなに頻繁に行わなくても、意外に時間は合っている。電源のON/OFFを頻繁にしているとその時計は狂ってくるのだが、ずっとONをしている間はそんなに変わらない。

そう、携帯の時刻とNHKの放送開始の「0秒」表示が全く違うのである。携帯の時刻は、中国にいる間に時間補正はしないかもしれないが、日本にいる間に勝手に補正されている。よく観ると、NHKの放送のほうが15秒ほど遅いのだ。これはもしかしたら携帯のほうが狂っているのかもしれない・・・っとおもい、父が腕時計を持っていたので、そちらでも確認した。父親の時計は、家を出てくる際に、117で時計あわせをしていたくらいだから、ほとんど時間に狂いは無い。それを見てもやっぱり15秒ほどNHKが遅れて放送しているのだ。

これは面白くなってきた。もしかしたら、意図的に15秒の遅延を中国国内で見せているのだろうという予想が立ってきたのだ。

そして事件は起こる。NHKは娯楽番組も当然放送するが、だいたい報道番組を中心に海外向けにも放送している。特に朝の時間帯はニュース放映が多い。例のごとく、ホテルでテレビを見ていたところ、ニュースの突然映像が切れた。音声も聞こえず、真っ暗状態。しばらくしたら、映像と音声は復活する。最初、「衛星放送だし、途中で映像が切れたのかな」というくらいの感覚でしか思わなかったのだが、何度かこの状態が続くと「おかしい」と気付く。それもニュースを行っている場合に限るのだ。娯楽番組や朝の連ドラが放映されているときには絶対に「真っ暗」にはならない。

理由がわかったのは、やっぱり朝のニュース放映をNHKで行っているときである。滞在期間は、例の天安門事件が6月4日にあったことにより、「まもなく20周年になる天安門事件」を日本ではどこの放送局でも放映しようとしていたときだ。中国では天安門事件自体を「無かった歴史」にしたいという意図が働いているため、海外メディアで放映されていること自体も国内で放映すること自体が絶対許されない。それがNHKでもCNNもである。NHKのニュースの仕方として、まず見出しを言ったあとに、内容の詳細を放映するという形式をとっていることが多い。いつものようにNHKが見出しを言った後、内容の詳細を放映する際の、天安門事件のその後という内容を放映する直前になって、テレビが真っ暗になった。

15秒の遅延というのは、生放送で放映されている海外メディアの放送の中で、中国に不利になるもの、民主化や天安門や法輪功のような単語が出てくるようなニュースが出てきた場合には、すぐにでも放映できないようにするための仕組みを作っているのである。海外の衛星放送といえども、中国では、住民・企業が直接パラボナアンテナを建物につけて、衛星から直接放送を見るということが実は許されていないことを後で知る。海外放送を見るためには、中国政府の息が掛かっているケーブルテレビに加入するしかないのである。

NHKでの真っ暗事件のあと、CNNではどうなのだろうか?と試しにCNNを見ていた。CNNでも天安門事件後20周年の放送をしようとしていたのだと思う。ところがカメラパンが北京に切り替わった途端に、画面が真っ暗になった。そして、北京からのリポートが終わった途端に画面が直っているのである。すべての海外放送のチェックを行っているというのは聞いたことがあるが、ここまで露骨に中国に不利になるような情報を国内に持ち込ませないように徹底している情報操作の厳重さを露骨に見て、恐ろしい国だと思った。

もちろんCCTVを中心とした政府直轄の放送局は、どこも天安門事件に関する放映は全く行っていない。いつもと同じ6月4日を迎えるような報道をしていた。

CCTV新社屋の今(北京)

2009年2月9日に、おもしろいニュースが夜にネット上で飛びまくっていた。それは何かというと、中国の国営放送局であるCCTVの新社屋が燃えているということだった。確か、テレ朝のニュースステーションでその放映を見てから、ネット上で祭りになっていたのではないかと記憶している。

実際に燃えていたのは新社屋の隣に建っていた高層ビル「北配楼」で、その中にはマンダリンオリエンタルホテルが入る予定だったビルなのだ。更に言うと、CCTVの新社屋ビルは、そのビルの形が奇抜で、そんな形のビルにして大丈夫なのか?というようなものだった。運営されれば、絶対に北京の観光スポットの1つになっていたに違いないところだったのだ。

ところが、火事で大きく様子が変わってしまった。

東三環北路に面しているこれらのビルは、車を使う人であれば必ず通る道である。その道からこれらのビルが、いまだに燃えたまま、そのまま放置状態になっているのが見えるのである。もちろん敷地内には入れないようにバリケードが貼られている。最初は、火事で燃えてしまったビルだけなのかと思っていたら、車が進むとその思いは間違いだと分かる。つまり、燃えていないCCTVの新社屋ビルのほうにもバリケードが続いていて、結局CCTVの新社屋ビルも使われずじまいになっているのである。
昔、赤坂に「ホテルニュージャパン」という老舗のホテルがあり、それが火事を起こして、日本では「まる適マーク」というのをつけるように消防法の指導が出来た経緯があるホテルがあった。ホテルニュージャパンも火事の後、かなりの時間の間、そのまま放置状態になっていて、一時期お化け屋敷と言われていたこともあった。もしかしたらCCTVの新社屋および隣接の北配楼ビルも、しばらくホテルニュージャパン状態になったまま年月が過ぎるのだろうと思う。

そういえば、北配楼が燃えている当日、北京にいる中国人に「いま、CCTVの新社屋ビルが燃えているという報道が日本であったのだが、実際にはどうなの?」とMSNで聞いたことがある。そのときの答えとして、当の中国人は「近くに住んでいるが、そんな様子は微塵も無い」と嘘ばっかりの返答をしてきた。翌日になると、隠し切れなかったのか、新華社通信もCCTVも報道してしまっていたのだが、なぜ北京の人間は全員最初は隠そうとするのだろうか。北京の自慢になろうとしていたビルが、もろくも崩れてしまって、いまでは鉄くずにしかなっていないことにがっくり来てしまったからなのだろうか。

あとで調べてみると、火災発生当日の夜、CCTVは新社屋火災の報道は殆どなく、そのときに起こっていたオーストラリアの山火事を繰り返して報道していた。さらに、当局はインターネットの各サイトに対して、「新華社の報道内容のみを報道し、写真は出さない、ビデオも流さない、深く報道しない、チャットの貼り付けを削除し、ブログはページのトップに置かない、この情報の報道を勧めない」との通知を下したという。

ふざけた国の中枢で起こった事件は、今でもそのまま爪あととして残しているというのは、急いで開発を進めている北京市当局にとって痛い事件だったに違いない。

王府井大街(北京)

北京最大の繁華街は「王府井大街」だろう。ここは地下鉄1号線の「王府井」からすぐのところにある。ところが、地下から地上に出るときには便利だなと思う場所にあっても、「北京の地下鉄」の項にも書いたとおり、逆に地上から地下鉄に乗ろうとする場合には、その乗り場がとても分かりにくいところにある。

一番分かりやすいのは、メイン通りの長安街に面したところに、巨大なショッピングモールとして君臨している東方広場のビルの中から行くことだろう。いちおう東方広場の中に入ると、矢印で乗り場方向を示しているので、それに従って行けば乗れる。だが、銀座や新宿の地下街のように、あちこちの場所から地下鉄の駅に出られるというわけじゃないので、東京の地下鉄に慣れていると、とても苛立つ。

その東方広場は、以前は「東風市場」と呼ばれていて、「築地の市場と御徒町のアメ横と縁日と京都の錦小路を銀座の和光の隣に置いたようなもの」と言われていたところだった。はっきりいえば、何が出てきてもおかしくないような玩具箱のようなマーケットだったといえばいいのだろう。実際には観たことが無いが、贋物やジャンク物を手に入れるんだったら、ここにいけばいいというのを、北京が発展する前にネットやテレビで観たことがある。そんな東風市場の名残は、いまの北京にはまったくない。なぜなら、北京のど真ん中に、世界に発信する北京オリンピックが開催される手前、ジャンクな集まりの集合ビルをそのまま放っておくことが北京政府によってなされるわけがないのである。そして、それは香港の大企業家である李嘉誠の手によって成し遂げられた。一時期は「広場じゃないのに、広場なんていう名前を使うなんて許せない」と共産党政権も開発にOKを出さなかったが、面子のためならなんでもする中国人の最後の手段を使って、結局は名前を変えることなく着工する。20億ドルの費用をかけて、みすぼらしいマーケットから、一流のブランドが入り込む巨大ショッピングモールにしちゃったのだから、まぁ、なんとも凄いということだろう。噂では、李嘉誠は今や北京の土地開発権の半分以上は彼の手にあるという。

ちなみに、東方広場は第1エリアから第5エリアの東西に分かれており、大体の場所は地図を見ればわかる。が、シンガポールや香港のシッピングモールのように案内板があちこちにあるというわけじゃない不親切極まりないので、自分がどこにいるのかは、東方広場の入り口に入ってすぐのところにいるInformationで簡易地図を貰ったほうがいい。第1エリアの地下フロアには、かなり大きなスーパーマーケットがあるので、生鮮食料品から日本のお菓子までなんでも手に入る。前にも書いたが、ペットボトルの水も、ここでまとめて買うのがいいかもしれない。ただし、手で持って帰るのはしんどいので、できるだけタクシーに乗って帰ったほうがいいとおもう。第1エリアから第5エリアまで、西から東へ歩いていくと、その巨大さが分かるのだが、まぁ、半端じゃないほど歩かされる。

東方広場からメインの王府井に入る通りは、人の流れを看ればすぐわかる。王府井は、まるで銀座のホコ天のような場所なのだが、その道幅がとてつもなく広い。両サイドにはたくさんのデパートもどきが立ち並んでいるので、目移りしてしまう。広い道なので人が多くてもそんなに多いとは思わないのだが、もうちょっと道幅を狭くしたら、すごく混雑している場所に見えるのだろうとおもう。すべての店に入ることは無かったのだが、だいたいの店は、値段があってないようなもので、値段交渉しないと物が買えない。その交渉を楽しむ程度ならいいのだが、真剣になって交渉に励もうとするとかなり使える。相手は商売人で、似たような観光客をこれまで何千何万人と相手にしてきたやつらなので、生半可な態度ではまけてしまう。物を買うには、だいたいの相場を事前に知っておく必要がある。ショッピング好きなら、これは常識として知っておきたいことだろう。

北京のレストラン一般

北京のレストランは全般的に言えることが2点ある。

1つは、「美林閣」のところでも記載したのだが、日本だと大抵のレストランに入った場合提供される最初の水とかお茶というのがまず存在しない。口に入るものは全て注文形式を取っており、たとえ水であろうともそれは金を取る対象になる。だから下手にお茶を注文するより、ビールやジュースを注文したほうが断然安上がりの場合もあるのだ。嘘だと思ってみたら、そのドリンクメニュの欄を見てみると良い。更に言うと、お茶の場合、確かにジャスミン茶や烏龍茶や龍井茶のような種類は、いくつか見られる。しかしながら、ここは北京であり、お茶の産地からはめちゃくちゃ離れている。お茶の産地は揚子江よりも南で生産されるものであって、一番北部である龍井茶でさえ、杭州で作られているものだから、北京からは遠い。従って輸送料のコストがかさむので、もっと遠いところの福建省で作られている烏龍茶なんて、眼が出るくらい高いのだ。なにせ1人あたり50元もお茶だけでとるのである。ビールなんて10元も出せば飲めるので、そう考えるとお茶は北京ではぜいたく品のうちの1つであるといえよう。そういえば、北京あたりの華北地方から東北地方にかけてはジャスミン茶が一般的に飲まれているものだと思われているが、ジャスミン茶は癖の強いお茶であるため、ジャスミン茶しか知らない人は他に選択肢が無いので無視するとして、緑茶を知っている日本人からすると、確かにジャスミン茶が苦手だという人は結構多いと思う。実際に、北京の店の人に聞いてみると、最近北京のひともそこそこ金が出てきたために、普段に飲むお茶としてジャスミン茶ではなく烏龍茶なんか飲んでいるやつも出てきたというから吃驚した。

もう1つ北京のどんな高級なレストランでも納得できないことがある。それは白米のことだ。北京のボロい店、いい店のどこにいっても、白米が本当に不味い。水が不味いからなのか、それとも米自体が不味いのかわからないが、どうしてこんなに不味いご飯が炊けるのだろうというくらい不味い。あんなものでお腹を膨らせるのであれば、他の料理を注文したほうがいい。北京では白米を注文することは絶対止めたほうがいい。あんなものを食うなら犬になったほうがいい。それほど不味いのだ。よく考えたら北京は華北地方で、そもそも米を食べる文化が無いところである。もともと小麦文化圏であるために、どちらかというと麺類が発達している場所なのである。麺の他に餃子のような皮で包む料理は発達しているところなのだ。米が作れない理由は簡単で、北京近郊は水が慢性的に不足しているのである。米作りには大量の水が絶対に必要なのだが、そんなことに水を使われると、大都会北京に水が行かなくなるため、北京の市民が水不足になってしまう。現に北京近郊のすべての川については、ほとんど干上がっており、川にはダムを作って、すべての水を北京市内に届くようにしている。従って、川沿いにある農家は、本来なら川の水を使って農作業を出来るところ、北京オリンピックで否応がな、無理やり川の水を北京市内に持っていかれたために、まともな農作業が出来なくなってしまった。後日、明の十三陵へ出向く際に、いくつかの川を越えて行ったのだが、川沿いで作っていたものはすべて果物で、時期として桃を作っていた。葡萄や桃などはあまり水をやる必要は無く、むしろ水分が不足したほうが糖度が増すのである。ヨーロッパでも大旱魃が起こるときに収穫された葡萄でつくったワインはめちゃくちゃ美味い(近年で言うと、2003年~2005年産のフランス南部からスペインのワインはどれも美味い)

美林閣(北京)

北京にもファミレスのようなものは存在するが、お手ごろ価格から、ちょっと高級のものまで千差万別のようだ。北京っ子に人気の上海レストランチェーンとガイドに書いてあったのが「美林閣(Meilinge)」だ。上海でもともとはチェーン展開をしている店で、北京でも10店舗以上が展開中。基本的に海産物を多く使う上海料理なので、海に慣れている日本人には味として一番似ているので食べやすいと思う。値段も20元~50元程度なので安いと評判なのだが・・・。

実際に注文をしてみた。後で記載するが、まず飲み物で「無料」の水やお茶は一切無い。アルコールと同じようにお茶を頼んでも値段がとられる。それも北京近郊ではお茶が取れないのでこれまた高いのだ。オレンジジュースのほうが安かったりするので、最初は度肝を抜かれた。

この日は北京初日でもあったため、朝早くから出発していたこともあり、あまり重いものを食べるのは良そうと思い、次のものを注文した。

・揚州炒飯
・蟹粉小籠包
・青椒炒鶏蛋
・洋葱炒大腸
・台湾凍頂烏龍茶

まず炒飯だが、これが意外にも油でべちゃべちゃで、もっと本当の炒飯はご飯がパラっとしているはずなのに、これでよくもまぁ客に出せるものだとたまげた。シンプルの素材を使っているので、油分だけもっと押さえればまともな炒飯になるはずなのに、きっとバイトが嫌がらせのように作ったのだろう。最終的には残した。小籠包は、蟹味噌と蟹肉を豚肉に絡めて作った小籠包で、これは通常の小籠包のように肉汁がじゅわーっと染み出てくるものだったから、とても美味く感じた。1籠4個入っているものだったが、足らないと思ったので2籠分を注文する。

ピーマンと玉子を絡めた青椒炒鶏蛋は、めちゃくちゃ塩気が強くて、食べるたびにお茶が欲しくなるくらいのものだった。ちょうど昼間に炎天下を歩いていて、塩分が足らなくなっていたからちょうどよかったものの、普通に食べているのであればこれは塩辛すぎる。見た目では全然塩辛いなんていうのが分からないのだが、きっと食塩を嫌がらせのように入れたんじゃないか?というくらいの量が入っていたに決まっている。これも残した。
意外に美味いとおもったのが、洋葱炒大腸。玉ねぎと豚のソーセージを辛目のソースで炒めたものなのだが、これが一番美味かった気がする。今回利用した美林閣は、王府井の歩行者天国の中央部にある金魚胡同沿いにある場所だったのだが、最初「あれ?開店してないのかな?」というくらい店が真っ暗だった。自分たちのほかには1組の客がいただけだったのだが、店の半分は、まるで北朝鮮のレストランのように電燈が消えていて、それって節約なのか?というくらいの嫌がらせだった気がする。最終的に日が落ちても、店の半分は電気が付かなかった。だから、とても暗い店なのだという印象が拭えない。また、接客をするウェイターの態度もダメだ。たぶんバイトなのかそれとも地方から出てきたばかりの子なのかわからないが、客が少なくて暇なのか、ずっと手持ちの携帯でなにかいじっているし、注文しようと思って手を挙げても無視。英語はもちろん全く出来ない。日本語はもちろん出来るわけが無い。中国語が喋れない観光客を野蛮人扱いの眼でみるのだが、こちらからみるとお前たちのほうが、よっぽど野蛮人見える。北京オリンピックを期にようやく客商売とは何なのかというのを知ったというが、まだまだ末端の人たちには客商売ができるような態度にはなっていないことが良く分かった。

美林閣
東城区金魚胡同19号
Phone : 51671777
営業時間:11:00~14:30, 17:00~21:30

北京の地下鉄

北京はオリンピックを期に、交通渋滞緩和と利便性の確保のために地下鉄を建設しており、それは今でもまだ建設している最中だ。全部の地下鉄路線が開通したら、北京観光は本当に便利になる。遠くて不便だと思われていた頤和園にも地下鉄でいけるのだから、こんなに便利なことは無い。ところが、東京の地下鉄と異なり、1つの駅間がとても長いので、1駅分くらい歩いちゃえ~なんていうことを考えていたら、それこそ後ほど「自分はなんて馬鹿だったんだ」と思うに違いない。地下鉄の入り口には地下鉄を意味する「地鉄」の読み方「DiTie」から取られて「D」のマークがあるところである。日本やヨーロッパのように、地下鉄=Metroという認識で「M」のマークを探していたら、一生探しきれないだろう。更に言うと、北京の地下鉄は東京や大阪の地下鉄の入り口と異なり、できるだけ出口を少なくして、何かあったときに、出入り口を制御するためになっているから、地下鉄の入り口を探すのが本当に困る場合がある。東京や大阪の場合、4つ角の交差点の下に駅がある場合には、4つの入り口があるはずなのだが、北京の場合にはそれが無い。1個しかない。わざわざ地上で道路を渡ってから地下に潜るというなんとも面倒くさい作りになっている。これは利便性が悪いに決まっている。

一番のメイン路線は、やはり天安門前の道路の下を走っている1号線だろう。途中に王府井や各種遊びの場所があるために、ここを北京滞在中に利用する観光客は多いはずだ。それから山の手線のように環状路線になっている地下鉄が2号線。こちらも城内の各箇所を廻る際には便利な路線である。

車輌は古い車輌と新型車輌の2種類があるようだ。古い路線の場合は、昔の丸の内線ほどぼろくは無いが、見た目が本当にボロい。しかし、新型車輌の場合は、最新型のJRの車輌みたいな感じだと思う。

現在のところ北京の地下鉄はどこまで乗っても1人1回2元だ。ヨーロッパの公共機関のように、地下鉄とバスを90分以内であれば1枚のチケットでいけるというわけではない。この点は日本の地下鉄と同じである。自動販売機ももちろん存在するのだが、どこまで乗っても2元なのに、意味不明ながらも、どこまで乗るのかというのを画面から駅を選択しなくてはいけないところだ。あれはどういう意味があるのかわからない。将来、たくさんの路線が出来た場合、遠いところに行く場合には値段を変えていこうということを意識しているのだろうか?ちなみに、自動販売機で切符を購入する際、1元硬貨はもちろんつかえるが、紙幣の場合、5元と10元の紙幣しか使えない。1元硬貨は使えるのに1元紙幣が使えないのだ。だから、おかしなことが発生する。例えば、5元紙幣を使って自動販売機で切符を購入したとしよう。そうすると、もちろんお釣りが1元硬貨として戻ってくる。それなら普通なのだが、硬貨が戻ってきたという音を聞いた途端に駅員がババーっとやってきて、お釣りの1元硬貨と駅員が持っている1元紙幣を勝手に交換する。硬貨と紙幣だから、価値としては同じなのだが、1元紙幣は自動販売機で利用できないので、こんなのを貰っても全く嬉しくない。きっと駅員としては、硬貨だと重いので、紙幣に換えてあげますなんていうことを思っているかもしれないが、毎回毎回切符を買うときに1元硬貨がないと、窓口に行って切符を買うか、大きな紙幣を崩すしかなくなるので不便この上ない。紙幣は偽札が多いといわれている中国で、硬貨ならこんなの偽造する暇なヤツがいないだろうという意味で、硬貨を客から分捕って、偽札でも掴ませても政府の知ったこっちゃないと思わせるように紙幣を客に渡しているとしか思えない。これは特定の駅で行われたというのではなく、ほとんどすべての駅で体験した。

駅で体験したといえば、一番ショックだったのは、飛行機の搭乗前に手荷物検査を受けるのはハイジャック防止のためであるのは言うまでも無いが、これと同じことが北京の地下鉄では行われている。すべての地下鉄乗客は、改札口を通る前に手荷物検査を受けなければならない。それで何を調べているのか分からないが、子供が玩具の鉄砲でも持っている場合にはどうなってしまうのだろうか?または玩具の刀でも持っている場合にはどうなってしまうのかよくわからない。いちおう駅の看板に「薬品・毒・火気類の持込は禁止」と書いているのだが、タバコを吸うのが多い中国人にとってライターは必需品だとおもうが、そのライターはいったい手荷物検査としてどう扱われているのか疑問で、観ているとほとんど無視だ。だから、一体手荷物検査で何を調べているのかが全く不思議で、ほとんどテロ防止のパフォーマンスでしかないように思える。場所によっては、乗降時だけではなく、降車して地上に出てくる前に手荷物検査を受ける場所もある。それは天安門広場前だ。1989年の天安門事件を、政府としてはどうしても許せないらしく、その事件を二度と国民にやらせないためにあの手この手を使って武力的に制御しているのがよくわかるが、その一例として手荷物検査をいたるところで実施して、武力衝突を事前に防ごうと躍起になっているのが良く分かった。

中国の地下鉄はどの町においても、その乗降時のアナーキーさはとても有名で、以前上海では「噂どおりだ」と思ったので、今回の北京の地下鉄においても、ラッシュ時じゃない場合でも、きっと降りる客なんか無視して、我先に乗り込む客がたくさんいるのだろう・・・と、半分期待しつつ、嫌だなーと思いつつも、どうなるのかとおもっていたら、意外にも乗降時のめちゃくちゃは無かった。それもそのはずで、どの駅のホームも公安警察の人間が駅員ではなくたくさん存在していて、乗客の監視をしているからだ。北京オリンピックの開催前に、マナーの悪さでは世界一と言われていた中国人の気質をどうしても変えようとしていたのは有名で、子供から爺や婆まですべての北京在住の人たちはマナー教育を徹底されていたことは、各国のニュースでも報道されていた。そのマナー教育はどうやら功を奏したようで、降りる人をちゃんと待ってから乗り込むという、至って普通の後継が見られたことはある意味驚愕だった。あの「自分は小皇帝」と思っているようなやつらが、他人様のために行動を待つなんていうことができるなんていうのを目の当たりにしたので、違反したときの罰金や刑がめちゃくちゃ厳しいのだろうと勝手に想像した。

乗り降りの状況もそうなのだが、車内の中でもその大人しさは続く。すべての車輌には天井に監視カメラが付けられているので、ちょっとでも怪しい行動をしていた場合、次の駅で公安警察が乗り込んできて、怪しい人間を締め出すということをする。うそでしょ?と思う人もいると思うが、実際にこの眼でその光景を見てしまったのだ。つまり乗客は車内の中で政府批判のビラを配ったり、ギャ-ギャ-騒いだり、酔っ払って絡んだしていると、公安警察がやってきて捕まるというシナリオになっている。監視カメラ形式は、一見厳しいように見えるかもしれないが、車内犯罪が多くなっている日本でも導入したほうが良いのではないかと思うが、どうなのだろうか?

上海の地下鉄に乗っていたときに「文明人が守る7つの事項」という笑ってしまうようなテロップが「次は・・・」という文字案内の間に流れるのを見て笑ってしまったことがあるが、北京でも似たようなテロップは見えた。しかし、上海ほどの強烈な印象は無い。単に「老人や体の不自由な人に席を譲ることは文明人の常識」というテロップくらいだった。もともと目上の人に対して尊敬の念を持っている中国人の気質だからだろうか、親と一緒に地下鉄に乗っていると、若い人は普通に、本当に普通に席を譲ってくれる。それもわざわざ遠いところからやってきて、「あっちに座りなさい」と誘ってくる人もいるくらいだ。席が空いたからといって、どこかの国のババアみたいにダッシュでやってきて席を確保するなんて言う事はまず無い。こういうところは見習うべきところだと感心した。それでも、車内テロップで「老人に席を譲ろう」と言っていることは、彼らの常識で考えるよりもっと徹底して譲るべきだという考えがあるからなのだろうか。

もう1つ地下鉄に関して報告したいことがある。それは乗換駅のことである。東京や大阪の乗換駅の場合は、結構便利がよく乗り換えられる。しかしながら、北京の乗換駅の乗り換えはかなり面倒くさい。どう面倒くさいかというと、なにせたくさん歩かされるのである。最先端技術で地下鉄の土木工事をしているのだから、戦前に作られた日本の地下鉄駅よりももっと立派にそして乗換えが便利に作れるはずなのに、とても同じ駅とは思えないくらいの乗換えをさせられる。これは北京のどの乗換駅でもいえることだ。感覚的にいうと、東京の大手町駅で、東西線から半蔵門線に乗り換えをするようなもの。同じ駅とはとても思えないくらい歩かされるのだ。よく考えたら、この歩かされる方式は何も北京だけではないことに書いていて気付いた。シンガポールの地下鉄も同じで、なんでこんなに歩かなければいけないのだというくらい歩かされる。しかしながら、台北の地下鉄はそんなに歩かない。降りる場所によって乗り換えに歩く場合があるが、比ではない。構造上の問題なのか、それとも戦時のシェルターを意識して作っているのかよくわからないが、とにかく乗換えが不便なので、あまり乗り換えをしたくない行き方を滞在中は考えていた。



天壇(北京)

北京オリンピックのマラソンコースにも使われた天壇にいくには、地下鉄でいくのが便利だ。ホテルにチェックインしたあとにまず行った場所がこの天壇で、1号線の永安里から乗って、途中の東単駅で5号線に乗り換えて「天壇東門」で降りれば良い。天壇東門の改札をでれば、歩いて1分のところに入り口が存在するため、そこから入ればいい。

天壇公園は、日比谷公園などの大きな公園とは異なり、入園するだけで入園料(10元)を取られる。これは新宿御苑の入園料の徴収の仕方と同じだ。入園料を徴収する割りには、園内では観光客とはどう考えても違うような、地元の人たちがたくさん園内に居て、わいわいやっていた。キリスト教なのか仏教なのかよくわからない宗教ソングを一緒に歌っている人はいるわ、中国将棋をしているひと、それを見ている人が集っているわ、もちろん若い子はスケボーやダンスの練習をしていたりしている。でも、10元も払って入っているとは驚愕だ。天壇の見所の多くを実際に見学するためには、さらに20元の追加費用を払わないといけない。これは最初の入園料と一緒に購入してもよいし、あとから特別料金を払ってもいい。どちらを選択しても損はしない。

東門から入っていくと、正面には天壇のなかの代表的な建物である「祈年殿」がある。写真で観る限りではすごい高い建物のように思えるが、それはその建物自体に風格があるだけであって、実際に見ると、それほど高い建物ではない。しかし、その土台から規模は、観るものを圧倒させるほどの実力を持っている。そもそも祈年殿自体が、皇帝が毎年五穀豊穣を祈願して正月に儀式が行われた場所。そんなに大きなものを祈願用に建てたこと自体に、暇と労力の度合いが見えるのだが、この建物の全てが中国古来の占いの集大成みたいなもので出来ている。まず、中国では奇数は幸運の数値として言われており、すべての建物に奇数に関する情報が埋め込まれている。三段式の土台になっているものもその意味だし、各段が9段になっているものもその理由だ。特に9の数字は最高の数字を意味している。建設自体は15世紀前半のものらしいが、何度も落雷や破壊があったために、そのたびに建て替えなおしており、いまの建物は1896年に建てたものをもとに、修復されている。

祈年殿は三層の円殿であり、天壇の中にある「圜丘」と対比して、ゆるやかな曲線を描く藍色の瑠璃瓦は、いかにも重厚である。頂きに鎏金の火珠を持っているかたちは、まるで満州族の官僚が被っている帽子に似ているではないか!高さ38メートル、直径30メートル、壇の高さは5.5メートル、最下段の直径は約91メートルもある。祈年殿から丹陛橋と呼ばれる圜丘との間を結ぶ橋を渡っていくと、目の前には、皇穹宇という円形の建物が見えてくる。この橋自体が、見事で、幅32メートル、長さ368メートルであるが、陰になるようなものが全く無いので、北京のような脳みそが解けそうな天候の場合は、かなり辛い場所だ。

皇穹宇は屋根の尖端に鎏金の火珠をいただき、ここには歴代の皇帝の位牌を安置している。これを囲むまるい塀は、一方の端で囁くともう一方で聞こえるらしい。しかし、観光客がたくさん同じことをしているので、全くこんなのは聞こえるわけじゃない。これは回音壁と言われている。最後に存在するのが圜丘だ。明の時代には二段の円壇であったが、清の時代になって三段になった。中心の円形の石板に立って、手を打つと、周りの石の欄干におとが当たって戻ってくるし、声もこだまするという。しかし、ここも人がわんさかいるわ、喧しいわという状態では、そんな幻想的な実験はできるわけがない。それにしてもこの天壇、めちゃくちゃ広い。半端じゃなく広い。それもそのはずで、総面積は82万坪以上もあり、紫禁城の約4倍もあるのだ。メインの建物のほかにもあるだろうと思ってちょっと横道に入ってみたら最後、もう戻ってくるのが嫌になるくらいの広さがわかるだろう。しかし、たくさんの木々がここには植わっているため、北京市内の樹木が全く無い道路とは異なり、こういう公園にいるとなんとなく落ち着く。
ちなみに「天壇」と言う名前からすると他にも似たようなものがあるのかなーと地図を眺めていると、やっぱりある。自然の4つの要素である、「天・地・日・月」の4つだ。紫禁城を中心に天壇は南、地壇は北、日壇は東、月壇は西に存在する。どれもそれぞれ意味があるものである。

京倫飯店(北京)

日航ホテル系列の京倫飯店は、ロケーションとしてとても便利な場所にある。地下鉄1号線の永安里駅から歩いて3分というから、北京市内の主要な場所に行くには本当に便利だ。そして、北京のメインストリートである長安街から続く建国門外大街沿いにあるので、タクシーでの移動の場合もとても便利である。北京首都空港から行く場合には、残念ながら地下鉄や空港バスというのは便利ではない。やはりタクシーが一番良い。空港から北京市内への直通地下鉄もあるのだが、これは乗り換えをしなければならないため、トランクを持っての移動は非常に困難である。(その理由は「北京の地下鉄」の項で述べたい)タクシーでの移動の場合は、所要時間にして約30分くらいで到着する。そんなに乗るとなるとかなりの金額になるだろうと想像できるが、ここは北京なので心配ご無用。途中の高速料金10元を余計精算されても、せいぜい80元くらいしか掛からない。日本円で1200円(1人民元=15円)しか掛からないからだ。

さて、今回泊まった京倫飯店では、通常の部屋ではなく、ここは奮発してスイートにしてみた。部屋名としては Studio Suite だ。まぁ、親も含めて3人で泊まるとなると、多少広い部屋が良いからだ。あらかじめJALホテルの予約センタに問合せをしてみたところ、1部屋1500元(朝ご飯付き)にエキストラベッド代240元+朝食代85元の、1泊1825元と言われ、中国の消費税である15%を足したとしても、5泊で10,493.75元で、これは日本円で直すと、1人1泊1万円くらいの値段と換算できる。贅沢してご飯をつけても1人1万円なら、親のことも考えるとその程度もいいかなと考えて選択した。通常の部屋だと700元程度なので、まぁ、普通に考えれば贅沢しているなと思える。これも物価の安い北京だから成しえることができるアドバンテージなのだろう。JALマイレージとして、通常の倍である1200マイルが加算されることも追加情報として記載する。

日航ホテルだからといって、従業員が全員日本語が話せるわけではないことは、泊まってみて初めて分かった。単なる日本の資本が入っているだけで、働いている人間が日本人ではないことは当然なのだ。所詮は中国人であり、流暢に話ができる日本人がいるわけではないことは注意したい。でも、英語なら問題なし。中国語ならさらに良しだ。スイートに泊まっている場合には、7階にある特別にビジネスセンターというところで、チェックインを行う。ビジネスセンタは、シンガポールのリッツカールトンホテルと同じように特別の人たち用の特別な待遇なのだが、今回に限って言えば、とても嫌な気分になった。ビジネスセンタには、たぶん暇なのだろうが、従業員がなぜか6人もいて、他にやることがないからなのか、我々のチェックインに6人がかりで行っている。中国のホテルでは、毎回嫌に思うのがチェックインの時で、それはなぜかというと、宿泊する人間のパスポートをまずはコピーし、さらにそれを政府にその都度提出しているからだ。つまり、泊まり始めた瞬間から、中国では宿泊者は監視対象になるのである。もちろん、ホテルにはガードマンのほかに公安警察の人間がエレベータの入り口にいる。ホテルの入り口ではない。エレベータの入り口なのだ。デポジットのためのクレジットカード提出は他国でも同じだが、クレジット情報を抜いているとしか思えないような手続きをされるのもあまり好きじゃない。代表者1人が宿泊手続きをするのではなく、宿泊者全員が手続きをしなければならず、どんなに小さい子供でも、体の不自由な年寄りも、サインに相当する手続きをしなければならない。監視対象の物体であり、中国政府を転覆させるかもしれない分子であるかもしれないのを事前に押さえ込もうとするのは中国らしいところだとは言えよう。

ホテル自体は、宿泊者以外はエレベータに乗っても上に上がれないように、下りる階を押す際には必ずキーが必要になってくる。これは、最近のホテルにはよくあるタイプのものであるので、これは別に気にしない。今回の宿泊階は最上階の12階だ。他のホテルよりはこのホテルは低い建物だと思う。比較的古い建物だからだろう。北京オリンピックを期に建設されたホテルは高層階形式になっているので、景色がもっといいものだと思う。

部屋に入ってみてスタジオタイプのスイートは、次のような構成になっていた。

・ベッドルームとリビングルームの2部屋
・ベッドルーム側にはトイレ・シャワー・浴槽のバスルーム。リビングルームは別トイレあり。
・ビジネス宿泊のために、デスクとLANはあり。
・無料ミネラルウォーターが1人2本分が用意されている(1本あたり350ml)
・テレビは両方の部屋に装備
・中国茶のセット(ただし茶葉は有料)とコーヒーセット(なぜか無料)はあり。
・湯沸しポットあり
・アメニティセットは通常のホテルとおりで完備
・スリッパおよび寝具は用意されている朝食の場所は1階の正面玄関から真っ直ぐ行った場所に存在する。まだ民度とマナーがあまり発達していない中国だけあって、ホテルのレストランなのに全面禁煙ではない。喫煙席と禁煙席を問われる。できれば、壁側の席をゲットしたい。なぜなら通路の真ん中に陣取ると、店員がひっきりなしにやってきて、うざったいからである。メニュのほうはというと、和洋中の基本は存在するのだが、シンガポールのリッツカールトン並みの種類の豊富さを期待してはいけない。あと、なぜか白米が不味い。パンも不味い。おかずはまぁまぁだ。コーヒーはなぜか美味い。そこそことにかく種類はあるので、いろいろチャレンジして批評して貰いたいものだ。しかし、白米が不味いというのは、一体どういうことなんだろう。これも別途記載したい。

京倫飯店(Jinglun Hotel)
URL : http://www.bcia.com.cn/
Address : 北京市建国門外大街3号
Phone : 65002266
Fax : 65002022

2009/06/10

北京へ

北京オリンピックが2008年に開催されて、そのためにだいぶ北京は変わったというのを、各種メディアで見る機会が多くなったのだが、なぜか北京だけは行きたいという気になれなかった。北京だけに限らず、2005年と2006年に上海に行ったときに、あまりにも上海の経済発展の度合いと、住んでいる人たちの民度のギャップがありすぎて、こんな国には二度と来たくないと思ったからかもしれない。さらにいうと、上海で、古い歴史的なものを、気持ちよくぶっ壊し、新しいが全く興味がもてないものがジャンジャン建設されている風景や、ぶっ壊したいのに、住んでいる人間がぎゃーぎゃー騒ぐから、見た目が汚いので壁で塞いじゃえという政策の下、胡同のような一般市民が住んでいるみすぼらしい家はすべて壁の向こうに隠しているという、なんだか嫌な見栄の世界をみたので、北京もどうせ同じだろうというのを感じたからかもしれない。

ところが、BSデジタル放送で紫禁城の素晴らしい建物の映像を2時間も放映していたり、万里の長城の浪漫的な長さの映像が流れているのをみて、両親がめちゃくちゃ歓んでいるのを見て、これは北京には一度死んじゃう前には、行きたくないがいかねばならないのかもしれないと思うようになってきた。また、近代化してきたといっても、まだまだ北京は人間的にみすぼらしいところだろうというのを感じて来たいと思っていたからである。

中国の歴史的には北京はそんなに魅力的な場所ではないとおもう。確かに金王朝から元・明・清と続く首都なのだと思うのだが、それは近代的な首都であって、日本人が考える中国の歴史の浪漫はというのは、どうしても唐の時代の長安のほうなのだと思う。しかし、明と清の時代に北京を華やかな中華圏の中心地に作り上げたことにより、いまの北京の歴史的な建築物がたくさん見られるようになったのだと思う。しかし、現在の中国は古き遺跡を全部ぶっ壊して、どうでもいいような新しいものを作り上げているところが節操が無い。

しかし、反面、行ったこともないのに好きじゃないというのは、北京に対して公平な評価をしているとはいえないので、いつかは行って見なければならないとは思っていたのだが、まさか両親の中国行きを期に自分も行くとは思わなかった。そもそも両親も北京に行くというのを決めたのは、単にJALのマイレージが貯まったことだし、それを使うには台湾か韓国か中国にはいけるというのを考えたとき、すでに中国でも(個人的には中国とは思いたくないのだが)香港は行ったことがあるので、そのほかにいけるところとしてみておきたいのは、紫禁城と万里の長城がある北京だろうというだけの理由で選んだからである。台湾慣れしている両親にとっても台湾にもう一度いくのもよいという選択はあったはずなのに、なぜに北京にしたのかは、「観たかったから」の理由以外にはないらしい。だいたい、中国にいい感じを思っていない親だけに「まともじゃない国に行く」ことへの抵抗は結構あったはずだ。

そんなこんなで北京行きを決めたのだが行く日程として「暑いのは嫌だ」「寒いのはいやだ」というわがままなことをいうし、北京自体が海沿いではないため、盆地気候と同じだから、夏は激暑で冬は極寒であるから、いい季節を選んでいくしかない。幸い、北京は梅雨がないから、じゃ、6月初めにしようという単純なあまり考えていない理由で日程も決まってしまった。

日程は下記のとおりである。

2009/05/30(Sat) JL781 NRT 10:55 - PEK 13:50
2009/06/04(Thu) JL782 PEK 15:20 - NRT 19:50

ホテルは、香港に行った時と同じように、親のために日本語が通じるところを選択。意外に北京は日本語が通じるホテルが少なく、結局日航系のホテルである「京倫飯店(Jinglun Hotel)」にした。北京にはもう1つ日航系のホテルがあるのだが、ロケーションがとても不便なところにあるため、選択の余地に入れなかった。もちろん、もう1つのホテルのほうが安いのは分かっていたのだが、ロケーションのよさはどこの都市に行っても同じことで、便利であるに越したことは無い。京倫飯店も場所はいいからだ。

しかし、世のなか豚インフルエンザが世界中の猛威を振るっているときで、渡航が懸念された。これはゴールデンウィーク前から懸念されていたことなので、そのうち収まると思っていたのだが、だんだん日本のほうで感染者が増えてきて、会社でも西日本への移動は禁止、オフィスでのマスクは強要などというお達しが出たくらいである。それでも最初に決めてしまっていたので、強行突破をしたのは言うまでも無い。会社に見つかったら、出社に及ばずということになっていたことだろう。